【S.楽園への科学】鴨三種食べ比べ

皆さん、お元気ですか。

本日は、鴨の三種類の食べ比べをおこなってみました。

食べ比べを行った三種類の鴨は、

1.京鴨(国産合鴨)
2.ハンガリー産合鴨
3.フランス産バルバリー種本鴨

です。

しかし、ここでまず食べ比べを行う前に確認するべき資料があります。
全国食鳥新聞なるエッジのきいた新聞の平成19年12月1日(第956号)に京鴨、国産合鴨、輸入合鴨、バルバリー種本鴨についての食味の機器分析を行った結果が掲載されておりました(広告記事だと思いますが)。
全国食鳥新聞, 2007年(平成19年)12月1日, 第956号, 4
詳細はリンクを確認して頂きたいのですが、生と焼の両状態において、食味、香り、テクスチャーを比較しております。

試料①:京鴨
試料②:国産合鴨
試料③:輸入合鴨
試料④:輸入本鴨(フランス産バルバリー種)
canard_chart1_160419
“生”、”焼き”ともに京鴨の味強度が一番強い。

canard_chart2_160419
“生”の場合、京鴨とバルバリー種が一番香りが強いが、香りの質が大きく異なる
“焼き”の場合、輸入合鴨の香りが一番強く、京鴨とバルバリー種の香りの強さは落ちる
また、”焼き”においても京鴨とバルバリー種の香りの質は異なる

canard_chart3_160419
“生”の場合には肉のかたさにおおきな違いはない
“焼き”の場合にはバルバリー種が最もかたくなる

以上のように、ここまで各鴨種の相互関係を見てきた上で、実際に今回の入手した鴨を見て参りましょう。

1.京鴨455g (掃除後330g)
canard_j1_160407掃除前455gの状態
canard_j2_160407しっかりと分厚い皮下脂肪が載っています
canard_j3_160407掃除・筋引きした後の状態

2.ハンガリー産合鴨204g
canard_h1_160407三種の中で最も赤い肉色
canard_h2_160407やはり分厚い皮下脂肪が載っています

3.フランス産バルバリー種363g
canard_f1_160407意外にも淡い色(エトフェ;うっ血処理していないためでしょう)
canard_f2_160407合鴨と比較すると本鴨は薄い皮下脂肪です

それでは、調理、実食です。

canard_cuit_160407

今回は生食は控え、ポワレにして食べてみました。

canard_dress1_160412

結果、最も印象的だったのはバルバリー種のかたさ。合鴨の柔らかさに比べると驚くほどかたかったです。
香りが一番強いのもバルバリー種。鴨特有の香りです。舌でざらつく「火を入れた血」のような舌触りも独特のもの。
一方で、ハンガリー産の合鴨はバルバリー種ほど香りは強くなかったですね。少しクセがあるかな、くらい。柔らかさといい、非常に食べやすい。特に、冷めると香りも薄れます。でも、鶏肉のようである、と言えなくもない。
京鴨は、ハンガリー産よりもさらにクセが控えめ、かつハーブのような爽やかな香りがします。少なくとも本鴨のような獣っぽい香りではありません。また、肉質もきわめて繊細で柔らかいです。

以上をみると、概ねデータに沿った感覚を覚えましたが、ハンガリー産合鴨に関してはデータよりも香りが薄かったです。
肉の美味しさとしては、京鴨が一番良かったように思います。翻って、鴨の滋味という意味では、この選択肢ではハンガリー産の合鴨をおすすめします。ハンガリー産はだいたいフランス産の半額ですし、鴨の野性味も弱いですが感じることができます。なにより、フランス産のバルバリーはかたい(個体差が大きい)ので、よほど商品を選ぶか薄切りにしないと厳しいです。写真のようなブロックカットだと、食べるのに苦労する場合があります。

最後に、データから見て分かるように、京鴨やバルバリー種では生の方が香り成分を多く持つという特性上、おそらくその滋味は肉中の結合水ではなく自由水に含まれていると思われるため、焼きはロゼかそれよりもむしろレア気味に焼くのが香りを楽しむコツだと考えられます。食肉組織は56℃から急激に緻密なアクトミオシンゲルを形成し始め、65℃をピークとしてゲルの緻密さが山を描きますので[1]、中心部に56℃以下を置くのがいいのかも知れません。逆に、輸入合鴨の場合には、むしろしっかりと焼きをいれた方が香りがたつようです。但し、安全性の観点でみた場合、京鴨ではきちんと衛生管理されているそうですが、その他の合鴨、真鴨(ましてや野生の場合)には、カンピロバクターによる腸炎が懸念されるので、中心部60℃1分以上の加熱が望ましいでしょう[2]。
また、京鴨などの合鴨を用いる場合でも、鴨感(?;鴨らしさ。です)を強く打ち出したければ、テフロン加工された調理パンを用いてポワレをすると、表面温度が低くなり香りが飛ばなくなります。また、ソースに鴨の溶け出した脂を使用すれば、かなり鴨の香りを補うことができます。
そして切り方の面について、合鴨はブロックカットでも問題なし。バルバリー種の場合には肉質についてよく吟味し、かたい場合には薄くスライスすることを推奨いたします。

[1] X. Liu, M. Ishioroshi and K. Samejima (1994). Effect of FeCl3 on heat-induced gelation of checken breast actmyosin.Anim. Sci. Technol., 66, 239-243.

[2] 厚生労働省(2007). カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)(平成19年3月5日付け事務連絡)

Bistro2983 Chef Patron

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Master of Life Science 生命科学修士

 

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