皆さん、お元気ですか。
前回の稿にて、筍の下ごしらえを細かく紹介いたしました。
続いて本日は、筍のテリーヌの完成までを見て参りたいと思うわけです。
前回の炊きあがった筍です。
これをテリーヌにするわけですが、その際に今回は日本の練りものを参考にしたいと思います。
日本料理における代表的な練りものに真薯がありますが、一般的に真薯には白身魚などの擂りものに対して卵白と自然薯を加え練り上げます。
一方で、料亭「青柳」の小山裕久氏[1]のレシピによれば、海老真薯に”卵の素”と称する卵黄とサラダ油のエマルジョン(塩と酢を抜いたマヨネーズのようなもの)を加え、味にコクを出しています。
鮨でも「すし匠」などでは、海老のにぎりに赤酢のシャリを合わせ、おぼろを噛ませたりしますから、これと同系の発想でしょう。
今回は、このレシピを踏襲しテリーヌに仕上げたいと思います。
レシピは以下の通り。
たけのこ 350g(2ケ)
ほたて 100g
卵白 1ケ分
卵の素
┏卵黄 1ケ分
┗サラダ油 大2
塩 3g
まず先端部を切り分け、細かく刻んでおきます。
根本の部分はフードプロセッサーでピュレ状にして、刻んだ先端部と合わせておきます。
(ここで、筍はさらしにとって水を絞った方が、仕上がりが締まります)
さらにホタテもピュレにして、合わせます。
ここに塩と卵白を入れ、練り合わせます。
さらに卵の素を加え、混ぜます。
上記を型に入れ、30分蒸します。
これが蒸しあがり。
適量を切り分けて、皿に盛ります。
今回は、ここに木の芽のジェノベーゼをつくって合わせました。
作ってみた結果ですが、いささか味が濃いです。
あくまでフランス料理のテリーヌとしての着地をイメージしていたので、イメージ通りといえばそうなんですが、ホタテの旨みと卵黄のコクが強いので、ホタテを鯛などの白身魚にして量を増やし、卵黄を抜いて卵白だけの仕上げにしてもいいでしょう。
料理の最大のジレンマは、素材と手間の塩梅です。京味の西氏は「いい素材といい出汁があれば、本当は料理人はいらない」とまで言っていますが、フランス料理は加工の料理なので、筍を活かす繊細さと加工をどこでバランスするかが料理人のセンスになるでしょう。特に今回は、下ごしらえした後に炙っただけで筍が美味しかったので、次はもうひとつ繊細な仕上げを目指すつもりです。
筍は、実はイネ科の植物で、乱暴に言うと系統としてはトウモロコシと同じです。
新鮮な筍に火を入れると、トウモロコシのような甘い香りがします。
そして、食材のマッチングを行うオンラインサービスであるFoodpairing.comによれば、この香気成分はパン類、炊いた玄米、炒ったゴマ、牛肉、調理したヒラメ・カレイ、ローストしたヘーゼルナッツ、調理したカボチャ、蜂蜜、生のライチ、ストロングダークビールなどと共通性があるようです。
このことから、筍のテリーヌの完成形として、ヒラメのピュレと卵白を使ってテリーヌを作り、ヒラメの骨とダークビールからソースをとり、アクセントとしてゴマと木の芽のエミュルションを添える、というのが一つ提案できます。
和食でも木の芽味噌を筍に添えたりしますが、木の芽味噌を分解して、味噌の香ばしさをビールに担ってもらう、という発想です。
次回、挑戦してみます。
[1] 小山裕久 (2008). えびしんじょ椀 河原渉 et al.・伊藤容子(編) 一流料理長の和食宝典 世界文化社 pp.116-119.
Bistro2983 Chef Patron
Master of Life Science 生命科学修士