皆さん、お元気ですか。
先般、【比較対照調理】牛肉の赤ワイン煮で紹介した牛肉の赤ワイン煮(65℃で3時間調理したもの)ですが、実際にゲストに提供してみたたところ、「以前(古典的な牛肉の赤ワイン煮の作り方のもの)の方が柔らかかった」「ソースとの一体感がない」という意見がございました。
なるほど、確かにこの時は「ソースの味」や「柔らかさ」よりも「牛肉自体のジューシーさと味」を優先したので、この意見は貴重です。
まず、「ソースの味」ですが、これは牛肉に味を残そうと思うとトレードオフの関係になるので、どうすることもできません。つまり、高温で煮込めば牛肉からソースにエキスが流出するので、ソースは美味しくなりますが、牛肉から味が抜けてしまいます。今回は、牛肉の中に味を留めようという趣旨ですので、これを解決するのは、別の手段によって「ソースの味を濃くする」か、「肉にソースが絡みやすくするか」です。
(別途、牛肉をソース用に用意して煮崩してしまえば、綺麗に解決しますが、価格にダイレクトに跳ね返ります。)
そして、「柔らかさ」ですが、これは名著「Cooking for Geeks」などでも言われているように、低温でも時間を十分にかければ肉は酵素反応によって分解されて、柔らかくなります。そして、十分に柔らかくなれば、肉に対するソースの絡みもよくなり、今回の問題は解決するのではないでしょうか。
では、一体何時間65℃の温度下で調理すれば、肉は柔らかくなるのでしょうか。
今回、やってみました。
その前に、実は、3時間調理の実験後、実際にゲストに提供するために仕込んだものは6時間調理したものでした。つまり、6時間では不足ということです。
【調理方法】
そこで、今回は最大48時間まで調理を行い、その途中12時間、24時間、36時間で検体をとって味見をして、十分柔らかいと判断できた(スプーンのみで牛肉が崩れた)時点で調理をストップするという方法をとります。
【結果】
結果として、65℃24時間の調理で牛肉は十分に柔らかくなりました。
【調理経過】
今回はまず、野菜、赤ワイン、ブイヨンから「赤ワインソース」を先に作り、そのソースとともに牛肉を密閉し調理することとしました。
まず、ソースとともに牛肉をいれた容器を65度の恒温下におきます。
そして、12時間後。
ラップをかけてお皿を重ね、
別の皿を20枚載せます。
全く沈み込まず、皿の重さを跳ね除けてしまいます。
スプーンで力いっぱい押さえつけても、肉はどの繊維のとこからも崩れませんでした。
次に、24時間のもの。
取り出した時点で、少しトングの先が肉の中に沈みこみましたが、皿を20枚載せると、皿が沈み込みます。
皿をどけると、肉の右はじが少し崩れていました。
次にスプーンで押し込むと、
その力で、繊維から崩れていきます。
その後、味を見てみましたが、肉自体は柔らかいのにパサつかず、牛肉の味がしっかりしておりました。
65℃で24時間。これが、牛肉の赤ワイン煮の新標準レシピと言えましょう。
なお、これをゲストに提供してみましたが、なかなかに好評でした。月曜日限定ということで出しましたが、「レギュラーにして欲しい」との声も頂いております。しかし、とにかく時間がかかるこのレシピ。。。どうしたものか。
今回の報告は以上です。
Bistro2983 Chef Patron