皆さん、お元気ですか。
4月も中旬に差し掛かり、たけのこが旬となってきました。
本日は、筍をつかってテリーヌを作ってみたいと思います。
さて、筍といえばアク抜きですが、古来より一般的な筍の方法は、皮つきのままの筍を沸かした湯にぬかと鷹の爪とともにいれて柔らかくなるまで炊く、というものです。
これはなぜでしょうか。
手順に沿ってその意味と必要性を確認していきたいと思います。
①筍の先端を斜めに切る
皮の各間隙に水が入りやすいように、断面積を広く斜めに切ります
これは合理的です
②筍の皮に縦の切り込みを入れます
側面からも水が入るように皮に深く切り込みをいれます
これも中心までなるべく均一に水と火が回るようにする、ということを考えると理解できます
③湯に米ぬかと鷹の爪をいれる
ここで、ぬかを入れる意味としては、ぬかに含まれるカルシウムが筍に含まれるアク成分であるシュウ酸と結合し、不溶性物質となることで筍の中に戻ることを防ぐというものです。また、米ぬかはアルカリになり、筍の細胞壁の基質を構成するペクチンとヘミセルロースは熱水とアルカリに可溶ですから、米ぬかを入れることで容易に細胞内からシュウ酸とホモゲンチジン酸が流出するようにできるわけです。
では、鷹の爪をいれる、という意味はどこにあるのでしょうか。これは、防腐作用のためという意見が多いですが、宮川ら[1]によると乾燥とうがらし(加熱処理したものでも同様)では、食中毒菌に対する発育阻止作用は認められないので、鷹の爪をいれる意味というのは無いように思います。
あと、しばしば米ぬかの代替として米のとぎ汁を使用するレシピがありますが、文部科学省所管、食品成分データベースに収載されている日本食品標準成分表よれば、各分量100g中に含まれている栄養成分としてのカルシウムは、それぞれ
ぬか 58mg
玄米 9mg
精白米 5mg
となっています。
これをみると、ぬかの代替として米の研ぎ汁を使用することが、どれだけ「気休め」であるかが実感できます。
ですので、今回は湧いた湯には米ぬかのみをいれます
④③に筍を皮つきのまま入れ、炊く
筍を皮つきのまま炊く、というのは、意味づけが諸説あるようですが、むき身と皮つきで両方やってみた感じでは、筍の皮に含まれる亜硫酸塩が筍の身を白くきれいに炊き上げるところにあるような気がします(亜硫酸塩は天然の漂白剤ですので)。ジャガイモと同様に皮に含まれる香りが身に共有されて、香りよく仕上がるということもありそうです。
よく言われる、身を柔らかくする、というのは論理的説明が見当たりません。
筍をいれ
筍が完全に沈むように重しをのせます
蓋をして、柔らかくなるまでたきます。
炊けました。
炊きあがった後も茹で汁の中で自然に冷めるのを待つ、というレシピがありますが、ざるか何かに上げてしまってダメな理由がないので、それでも構わないでしょう。但し、これ以上あまり火を入れたくないがエグみはまだまだ強そうだ、という場合には、茹で汁の中に入れておくというのはアリだと思います。
⑤皮をむく
皮をむきました。
むいた皮の裏にある白く柔らかい可食部を絹皮と言い、ここも独特の歯触りでオツなものです。
今回、絹皮の部分や先端部分では、食べ終わった後に若干のエグみが舌の奥や喉に残りましたが、筍の香りがよく非常に美味しく炊きあがりました。
極めて新鮮なものは例外として、エグみを完全に除こうとゆで時間を増やすと、筍の香りも失われていきます。エグみと香りはほぼトレードオフと考えてよさそうです。
茹であがったものを軽く炙って塩を振るだけでもサクッとした歯触りと筍の甘い香りに包まれて、非常に美味しいです。
それでは、今回はこれまで。
以降、後半のテリーヌ製作編に続きます。
[1]宮川豊美, 川村一男 (1989). 食中毒菌に対する香味野菜の発育阻止作用, 和洋女子大学紀要. 家政系編, 29, 13-19.
Bistro2983 Chef Patron
Master of Life Science 生命科学修士
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