【S.味の寄り道】ぬかと重曹について

皆さん、お元気ですか。

タケノコが美味しい季節になってきましたね。

八百屋でもはしりの特売などをやっています。

京味などの一流店では、朝採り掘りたてのタケノコを提供していますが、朝採りのタケノコが重宝される理由は何でしょうか。

タケノコは切断後から急激にエグみが増し、甘みや旨みは薄れて食感もかたくなります。このエグみの原因はホモゲンチジン酸とシュウ酸という物質によるもの。シュウ酸の分布は絶対量としては先端が一番多いのですが、根本の部分などは切断24時間で倍にもなります。つまり、それだけエグみがましているということ。

ホモゲンチジン酸は旨み成分であるチロシンの代謝生成物であり、シュウ酸は植物内におけるエネルギー生成の反応副産物として出るグリオキサールの代謝生成物です。

時間が経ったタケノコを淡い味で食べるためには、これを除去しなければなりません。

この時に使われる先人の知恵が米ぬかをいれたお湯(米のとぎ汁)でタケノコを湯がく、というものです。

米ぬかはアルカリ性であり、かつカルシウムを含んでいます。

重曹もそうですが、植物は米ぬかなどの入ったアルカリ性溶媒で炊くと、細胞壁にあるペクチンが溶け出し、細胞壁に穴があきます。タケノコも同様で、この細胞壁の穴からホモゲンチジン酸やシュウ酸が水中に溶けだします。さらにシュウ酸は米ぬかのカルシウムと結合することで不溶化し、二度とタケノコに戻らなくなるわけです。実際に、米ぬかをいれた湯でタケノコを炊くと、水で炊くよりも水中に存在するシュウ酸の量が多くなります(女子栄養大学、調理学第一研究室より)。ちなみに、熱湯によりタケノコ中の酵素も失活するため、新たなホモゲンチジン酸やシュウ酸の生成も止まります。

こんなわけで、タケノコはぬかをいれた湯で炊くとよい、と言われるわけです。

さて、ここで重曹の話が出て参りました。

重曹といえば、昔から使われている比較的万能な食品添加物です。

その効能は、①発泡剤として②発色剤として③消臭剤として④灰汁抜きに⑤食感改善に、とまとめられます。

発泡剤としては、ベーキングパウダーが有名ですね。炭酸水素ナトリウムは加熱すると水と二酸化炭素に分解しますので、素材の中に気泡を作ります。

発色剤としては、野菜を茹でるのに、茹で汁に入れたりします。野菜の緑色はクロロフィルが呈していますが、クロロフィルはアルカリ中で反応しクロロフィリンになり、より鮮やかな発色をします。

消臭剤としては、重曹はアルカリ性なので酸性の匂い、例えば酸化臭などは重曹で中和して消臭できます。

灰汁抜きに関しては、先程の解説どおり。細胞壁に穴をあけ、灰汁の成分を放出させます。

次に食感改善。肉や魚、豆などでよく言われますが、素材中のタンパク質を分解します。肉や魚では、アクトミオシンゲルの熱凝集を抑制することで、柔らかくなります。海老でも、重曹を使うとプリプリになるということが言われますが、「海老がプリプリ」というのは素材の中に適度に水分が保たれた状態のこと。通常、海老を加熱するとタンパク質が凝集して水分を外に追い出しますが、重曹の作用によって凝集が起きず、水分は保たれます。豆のタンパク質はアルカリで溶けやすいので、重曹で早く柔らかくなります。

このように古来より使われている食品添加物ですが、こうして考えてみると非常に合理的で驚かされます。

Bistro2983 Chef Patron

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Master of Life Science 生命科学修士

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