【比較対照調理】牛肉の赤ワイン煮

皆さん、お元気ですか。

本日は、フランスの伝統料理である牛肉の赤ワイン煮の比較対照調理を行ってみたいと思います。

牛肉の赤ワイン煮の標準レシピと言えば、その名の通り、牛肉と香味野菜を赤ワインで煮込み、煮込みに使った赤ワインの煮汁を煮詰めてモンテブール(バターで乳化させてとろみをつけること)してソースとするものです。

しかし、現代の調理の常識として、以下のようなタンパク質の変性を念頭に置き、素材の温度を適温に保ちつつ火入れが行われます。

From “The perfect steak, In Search of perfection – Heston Blumenthal, BBC.”

このタンパク質の組成や温度に対する応答の詳細は別の項に譲るとして、基本的にタンパク質は2段階でその動態を変えると思って頂いていいでしょう。50℃を超えたあたりからタンパク質自体がまず最初の分解・変性をし始めます。この段階で、タンパク質は柔らかく、食べやすくなっていきます。そして、65.5℃を超えたあたりから、2段階目の変性をし始めます。ここでタンパク質は凝集をはじめ、分子は脱水を起こします。体感としては、肉は灰色への変色を始め、肉汁の流出により旨みは抜けパサついていきます。

このようなタンパク質の温度応答を踏まえ、「じゃあ、肉は赤ワインの中で煮込まない方がいいのではないか」という仮説が生まれます。

ただ、前述の古典的な作り方でも、パサつくとはいえ箸でも割れるような肉の煮上がりになり、その崩し目に赤ワインソースが絡んで食べられないことはありません。これを「柔らかい」と表現することも十分可能です。

では、実際の食感・食味はどう変わるのか。これは実際に比較調理してみないことには。。。

というわけで、レシピです。

A群(65℃のブイヨンでコンフィにした後、B群のソースの中で温める)

B群(古典的レシピに則り、牛肉を赤ワインで煮込んだ後、ブイヨンで煮込み、牛肉を除いた煮汁を煮詰めソースにする)

まずは、B群の煮込みに使う香味野菜を炒めます。

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次に牛肉の表面に焼き色をつけます。これは、肉の表面にメイラード反応というものを起こさせ、人が美味しいと感じる分子を纏わせるためです。

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上記の牛肉2片のうち、左がA群に右がB群に向かいます。

 

まず、B群の肉と炒めた香味野菜を手鍋に移し、

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赤ワインを注ぎ、煮詰めます。

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赤ワインがミロワール(鏡面状;赤ワインは煮詰めるとシロップ状になり、表面に照りがでます)になったら、ブイヨンを注ぎ、さらに3時間煮込みます。

次に、A群の肉をブイヨンとともにパック詰めし、

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パックごと鍋に移して65℃を少し超えるくらいまで加熱します。

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その後、湯温を65℃前後に保ちつつ、3時間保温します。

以下がA群とB群の調理後です。

左がA群、右がB群です。

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これらを、ブイヨンを煮詰めたソースに戻し、温めます。

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完成した肉をスプーンで押してみます。

コンフィにしたA群は強い弾力でスプーンを押し戻してきます。この段階では「柔らかい」という感覚よりも「弾力がすごい」という感想です。

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次にB群。こちらは、スプーンが肉の繊維に沿って内部に滑り込んでいきます。間違いなく、「柔らかい」という感想。

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実際に食べてみると、A群の方は3時間もブイヨンでコンフィにしたのに肉の内部に肉汁と肉の風味が詰まっています。そして肉の弾力はあるのですが、では堅いのかというとそうではなく、サクッと噛み切れます。とくに筋の部分はコラーゲンがキチンとゼラチン化して柔らかくなっています。つまり、肉本来の味と食べ応えがありながら、堅い部分はちゃんと処理されているのです。

次に、B群。確かに柔らかい。というか、繊維にそってすぐばらばらになります。煮込んだことによって、赤ワインの風味もすごいですし、ソースの味もしっかり染みています。しかし、肉本来の味はほとんどなく、またなによりも食感がパサパサな仕上がり。

好き嫌いもあるのかもしれませんが、素材を活かし、美味しさを加えるというのが調理の原則だとすると、軍配は完全にA群に上がります。今回は、ただのブイヨンでコンフィにしたのでA群は味が薄かったですが、これは予め赤ワインソースを作ってしまって、その中でコンフィにすれば、しっかりとした味もつくのではないでしょうか。これも追ってレビューしてみたいと思います。

最後に、A群、B群を半分ずつ食べたところで、残りをスプーンで力いっぱい押し潰してみました。

左のA群はしっかりと形を留めているのに対し、右のB群は繊維にそってバラバラにほどけてしまったのが見て頂けると思います。

正直、ここまで肉の味が違うとは思いませんでした。目から鱗です。

今後は、A群と同じ肉の状態の赤ワイン煮を、いかに美味しくかつ効率的に作れるかを追求していこうと思います。

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以上、今回は、牛肉の赤ワイン煮の比較対照調理のレビューでした。

Bistro2983 Chef Patron

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